アポロ計画において、電気系統が使えなくなってもアナログの計算尺は役に立つので携帯用として搭載することになったのだろう。Pickett 製なのは国家プロジェクトなので米国産である事はもちろん、オールアルミ尺で強い太陽光線や熱、真空にも耐える必要から当然だろう。燃えやすいセルロイドなどは以ての外!
ずらし尺がπ切断(xF尺がx尺のπ倍になっている)というところも天文学の世界では頻繁に使用する定数なので妥当である。πゲージは正確に目盛りを合わせようとすると結構時間が掛かるが、両端がπという構造は合わせやすい。宇宙飛行士が計算尺を必要とするシチュエーションはおそらく一分一秒を争う状況なので重要な要素である。(*1)
LLn尺はそれぞれ数直線上下に (フィッシュボーン状に) ±を配置しており、視線を動かす必要がなくそこが逆数でもある。尺面のスペースが少なくて済み、このポケットサイズの尺では非常に合理的。
| 器種 概要 | タイトル | 月へ行った計算尺 |
| ブランド | Pickett & Eckel | |
| 型番 | N600-ES | |
| ロゴ | 〇▽・に筆記体でPickett | |
| サイズ | 5 " | |
| スタイル | Duplex | |
| システム | Log-Log Duplex | |
| 製造時期 | 1962年頃 | |
| 製造国 | アメリカ | |
| 構造 | ブレースの形状=Curved | |
| 寸法 [mm] | 長さ | 153 |
| 幅 | 28 | |
| 厚さ | 2.8 | |
| 重量 [g] | 総重量 | 35 |
| カーソル | ||
| 材質 | 本体 | ストック、スライド、ブレース、ネジ すべてアルミ |
| カーソル | ウィンドウ、ランナーともプラスチック (ネジ、板バネは鉄) | |
| 尺 目盛り | 表面 | LL1±, A [B, ST, T, S, C] D, DI, K |
| 裏面 | LL2±, DF [CF, Ln, L, CI, C] D, LL3± | |
| 計・備考 | 22尺、xF尺はπ切断。 | |
| その他 目盛り | ゲージ マーク | π=3.1416【A,B,C,D,CI,DI,CF,DF尺】 e=2.71828【LL2,LL3尺】 |=78.5398辺り=π/4【A,B,C,D尺】 R=57.2958度=1ラジアン【C,D尺】 (ρ°と同じ役割) ' =1度58分12秒【ST尺】 (ρ'と同じ役割) " =1度10分55秒【ST尺】 (ρ"'と同じ役割) |
| 定規 | なし | |
| 付属品 | ケース | ヌメ革。私が知る計算尺ケースの中で最も原価が高そうな良い牛革を使用している。鉄のクリップも革で覆われ、プルタブ(これも革)で尺を取り出せる工夫もあり秀逸。35g。 |
| マニュアル | 欠品 | |
| その他 | ||
| 備考 | 特許等 | |
| その他 | カーソル寸法:38.8x19x7。 Pickettといえば黄色。目の疲労を抑えるのだとか。そういえばIBMの古いコンピューターのディスプレイも文字は黄色だった。アメリカで流行ってたのか。 |
| *1 | 宮崎治助氏は「計算尺発達史」の中で一般用尺でのπ切断の採用を否定しているが 宇宙飛行士が使うならきっと許してくれただろう。 |
| 表面 |
| 裏面 |
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