2023/02/26

HEMMI No.2664

No.2664は造りや尺面にバリエーションが多く存在する。これらの他にも、Paul Rossさんやじぇいかんさんのブログでは定規部分が無い竹面エッジのモデル等が紹介されている。①②は簡易的なケースであったり、②のセルロイドの品質から物資不足が影響したと考えられる。

器種
概要
タイトル HEMMI No.2664 バリエーション
ブランド HEMMI
型番 No.2664
ロゴ ①エッジ左②ストック裏下に〇"SUN"〇 HEMMI
③④〇SUN〇 HEMMI
①②引用符""は垂直
〇は太陽に光線 (クサビ形①②長短6本、③④8本)、雲 (2本線)、
左右同一④は間隔広め
サイズ 10 "
スタイル Closed
システム 一般技術用
製造時期 ①②1940-45?
③1947-50 (*1)
④1953/1 (DA)
製造国 日本 (③MIOJ) (*1)
構造 【ヘンミ片面G5など】
溝:①透明セルロイド②③④白色セルロイド②中央縦に切れ込みあり
裏窓:①長丸穴、②③④⊃⊂切欠+透明セルロイド
接合版:アルミ、①③穿孔あり
寸法
[mm]
長さ ①②③285
④195 (*2)
40.5
厚さ 11.2
重量
[g]
総重量 ①③93
②94
④107
カーソル 6
材質 本体 竹、セルロイド
接合版:アルミ
リベット:アルミ
③真鍮ネジ4本
④鉄ネジ4本
カーソル 【一体型ステンレス】
フレーム:ステンレス
板バネ:鉄
ウィンドウ:ガラス

目盛り
表面 K, DF
[CF, CI, C]②③④は赤CI
①②D, A+L (*3) ③④D, A
裏面 -
①②[TI2, TI1, SI2, SI1]
③④[TI2, TI1, L, SI1]
-
計・備考 ①②12尺
③④11尺
その他
目盛り
ゲージ
マーク
π=3.1416【C,D,CI尺】
C=√(4/π): C,D尺の直径からA,B尺に面積を計算。【C,CI尺】
ρ”=206265秒=1ラジアン【C尺】
ρ’=3438分=1ラジアン【C尺】
②③④√10【CF尺両端】
定規 ①上cm、下inch
②③④上inch、下cm
付属品 ケース ①黒のクロス紙張り厚紙、蓋なし、289mm
②茶のクロス紙張り厚紙、蓋なし、290mm
③黒のクロス紙張り厚紙、鞘方式、295mm、蓋113mm
④黒のクロス紙張り厚紙、鞘方式、300mm、蓋113mm
マニュアル 欠品
その他 ①裏テーブル欠品
②ケース値札に手書きで「№ HEMMI 2664 \80.80 tax \11.28?」
③裏テーブル欠品。ケース値札に「マル届?50円?物品税並サック代」(*4)
備考 特許等
その他

*1 MIOJ="MADE IN OCCUPIED JAPAN"は1947-52年に日本からの輸出品にGHQが義務付けたもの。③には1950年以降のDate Stampが無いため1947-50年頃と推測。
*2 この頃、10インチ片面"//Closed||"の長さが295mmに統一される。
*3 A尺とL尺を1単位ずつ半分割り当てた目盛り。A尺の11-100が無いのはともかく、L尺の0.1-0.5はDF尺に対応するので、なるほど半分で済む。
*4 マル届=届出価格。戦時の物価統制のマル公価格から自由価格に戻る際に暴利行為、不当高価取締のために設けられた。

常態

正面、溝

裏面

ケース表

ケース裏

2023/02/19

BARBOTHEU Mannheim 25cm, 12cm

非常に情報が少ないがフランスのバルボテウ社 (*2) のマンハイム。別のモデルでは原料の木は堅く密度の高い Zapatero という情報もあるが、少し白っぽいので Boxwood の可能性がある。ストックは溝部分の台、ベベル、エッジ計3枚の板が接着されているだけで、接合部品はなく調節は不可能だがスライドとの密着度合はなかなか良い。②厚みがありポケットサイズの割に少し重く、カーソルフレームも他では見られないマットな感触で持ち物としての満足感は得られると思う。幅と厚さは①②ともほぼ同じで、カーソルのサイズも同じである。

器種
概要
タイトル フランスのポケットサイズマンハイム
ブランド BARBOTHEU
型番 ①240?
②不明
ロゴ BARBOTHEU PARIS
サイズ ①25 cm (10 ")
②12 cm (5 ")
スタイル //Closed||
システム Mannheim
製造時期 最遅で1913年頃
製造国 フランス
構造 正面、ベベル、エッジ、滑尺、溝:セルロイド
裏窓:長丸穴タイプ (*3)
寸法
[mm]
長さ ①280
②150
29.6
厚さ ①11.2
②11
重量
[g]
総重量 ①75.6
②42
カーソル 7
材質 本体 Zapatero or Boxwood、セルロイド
カーソル アルミ矩形
フレーム:アルミ (②防さび処理か艶消しの黒)
板バネ:鉄
ウィンドウ:ガラス

目盛り
表面 A
[B, C]
D
裏面 -
[S, L, T]
-
計・備考 7尺
目盛線タイプ:Railway track
その他
目盛り
ゲージ
マーク
①【A,B尺】②【A,B,C,D尺】
π=3.1416
①【A,B尺】
’=3438分=1ラジアン
”=206265秒=1ラジアン
①【C,D尺】
C=√(4/π): C,D尺の直径からA,B尺に面積を計算。
C1=√(40/π): Cと同様だがA,B尺の2単位目 (10~100) に対応。
定規 上 cm
下 cm
溝延長 cm
付属品 ケース 欠品
マニュアル
その他 裏面テーブルは貼り付けられた上からニスが塗布してある。
備考 特許等
その他 ②使用者独自のゲージマークが刻まれている:
  • 1.61辺りにM|K(mile|km)
  • 3.28辺りにM/FEET(m/feet)
  • 39.4辺りにM|IN(m/inch)
  • 0.454辺りにG.LB|L.KL(ポンド/キロ)
  • A尺62辺りにM|K(km/mile)

*1 フランスなのでインチではなくセンチを使用。1913-14のカタログによると、20cm, 25cm, 35cm, 50cmのモデルがある。(12cmは記載されていない)
*2 Georges Barbotheu (1857-1925) ジョルジュ・バルボテウ (発音はバルボテュー、バルボシューに近い?) は、1885年に精密機器、製図品、測量機器を製造する会社を設立。計算尺は 1888年~1913年の間、製造していたと思われる。
*3 HEMMI 片面”//Closed||” 型のG1~G2の裏窓と同様の位置と形。HEMMI の尺は基本的にA.W.FABERの模倣が多いが、裏窓だけはバルボテウ社のようなものを採用したようだ。

常態



溝、滑尺裏

②右エンド
ストックとスライドの相性が良い組に同じ番号を振った

2023/02/05

Pickett N600-ES

アポロ11号の年に生まれた自分としてはどうしても欲しかった一品。少々お高めだったが海外サイトで購入。ブレースの形状違いで3世代(Square, Curved, Hooked)ありこれはその内2番目。多分2番目以降がアポロに搭載されたモデル。

アポロ計画において、電気系統が使えなくなってもアナログの計算尺は役に立つので携帯用として搭載することになったのだろう。Pickett 製なのは国家プロジェクトなので米国産である事はもちろん、オールアルミ尺で強い太陽光線や熱、真空にも耐える必要から当然だろう。燃えやすいセルロイドなどは以ての外!

ずらし尺がπ切断(xF尺がx尺のπ倍になっている)というところも天文学の世界では頻繁に使用する定数なので妥当である。πゲージは正確に目盛りを合わせようとすると結構時間が掛かるが、両端がπという構造は合わせやすい。宇宙飛行士が計算尺を必要とするシチュエーションはおそらく一分一秒を争う状況なので重要な要素である。(*1)

LLn尺はそれぞれ数直線上下に (フィッシュボーン状に) ±を配置しており、視線を動かす必要がなくそこが逆数でもある。尺面のスペースが少なくて済み、このポケットサイズの尺では非常に合理的。

器種
概要
タイトル 月へ行った計算尺
ブランド Pickett & Eckel
型番 N600-ES
ロゴ 〇▽・に筆記体でPickett
サイズ 5 "
スタイル Duplex
システム Log-Log Duplex
製造時期 1962年頃
製造国 アメリカ
構造 ブレースの形状=Curved
寸法
[mm]
長さ 153
28
厚さ 2.8
重量
[g]
総重量 35
カーソル
材質 本体 ストック、スライド、ブレース、ネジ
すべてアルミ
カーソル ウィンドウ、ランナーともプラスチック (ネジ、板バネは鉄)

目盛り
表面 LL1±, A
[B, ST, T, S, C]
D, DI, K
裏面 LL2±, DF
[CF, Ln, L, CI, C]
D, LL3±
計・備考 22尺、xF尺はπ切断。
その他
目盛り
ゲージ
マーク
π=3.1416【A,B,C,D,CI,DI,CF,DF尺】
e=2.71828【LL2,LL3尺】
|=78.5398辺り=π/4【A,B,C,D尺】
R=57.2958度=1ラジアン【C,D尺】 (ρ°と同じ役割)
' =1度58分12秒【ST尺】 (ρ'と同じ役割)
" =1度10分55秒【ST尺】 (ρ"'と同じ役割)
定規 なし
付属品 ケース ヌメ革。私が知る計算尺ケースの中で最も原価が高そうな良い牛革を使用している。鉄のクリップも革で覆われ、プルタブ(これも革)で尺を取り出せる工夫もあり秀逸。35g。
マニュアル 欠品
その他
備考 特許等
その他 カーソル寸法:38.8x19x7。
Pickettといえば黄色。目の疲労を抑えるのだとか。そういえばIBMの古いコンピューターのディスプレイも文字は黄色だった。アメリカで流行ってたのか。

*1 宮崎治助氏は「計算尺発達史」の中で一般用尺でのπ切断の採用を否定しているが 宇宙飛行士が使うならきっと許してくれただろう。

表面

裏面